元殺し屋と、殺し屋








澪鵺を見ると、あの綺麗な紫色の瞳が、怪しく光を放っていた。

消灯時間はとっくに過ぎているので、電気は消してある。

なのに、何故かとても明るい。



・・・あぁ、今日は満月だ。

真ん丸なお月様が、明るい。

私たちを、世界を、照らしている。



月の光に照らされた銀髪の澪鵺は、凄く美しい。

同じ人間だとは思えない。

まるで・・・おとぎ話に出てきそうな妖のよう。




「紅羽。
紅羽は人を傷つけたくないから、殺し屋をやめると言ったな」

「う・・・うん・・・・」



敬語ではない優しい声。

さっきの鋭い声とは大違い。




「じゃあ、俺らに頼んできた依頼者はどうする?」

「え・・・?」

「この間の富岡カナコを思い出せ。
あの人は、双子の姉に彼氏を取られた。
依頼者は、ターゲットを、恨んでいただろう?」

「うん・・・」

「もし俺らが紅羽と同じよう、依頼を受けずに殺し屋をやめたとしたら、富岡カナコさんを初めとする依頼者たちはどうする?
怒りをどこにぶつければ良い?」


「あっ・・・」








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