元殺し屋と、殺し屋
「はぁ、案外楽に行けたね。
誰にも会わなかったし」
「紅羽の運の良さのお蔭ですよ!」
キラキラした少年のような眼差しを向ける澪鵺。
先ほどまでの大人びた表情はどこへ消えた?
さっきの私を説得していた澪鵺、かなり怖かったんだけど。
今は怖さなんてこれっぽちもないよ。
話し方も敬語へ戻っているし。
どちらが、本当の澪鵺なの?
「澪鵺、目的地はどこ?」
「ここから徒歩数分の距離です」
「そうなんだ。
依頼者とターゲットは?」
「この近くにあるアパートの管理人と住人です。
あんまりにも住人が家賃を払わないので、管理人さんがついに怒って依頼してきたそうですよ」
「本来ターゲットを仕留めるのは、この付近担当のブラックキャットの殺し屋よね?」
「そうですよ」
「力が及ばないから、私たちが仕留めるの?」
「はい」
「よっぽどの新人なのね、ソイツ」
「いえ、新人ではありません」
は?
てっきり新人だと思っていたのに。
新米殺し屋じゃないのね?