元殺し屋と、殺し屋
きちんと戸締りをして、バーへ出掛ける。
今は大体17時。
家からバーへ行くとき見える電車の中が、少し混んでいる。
帰宅ラッシュの始まりかな?
まぁ良いや。
氷さんの営むバーは、狭い路地裏にある。
茶色い壁に黒い扉の、シンプルな見た目だ。
20時からバー自体は始まるが、一応昼間も開いている。
朝10時から20時までは、殺しの依頼者がバーへ入る。
このバーは、昼間殺しの依頼を集める、事務所みたいなものなのだ。
ちなみに依頼者たちは、殺しの依頼をしたら、決して他人にこのバーのことや依頼したことを話してはならない。
もし話してしまうと、その依頼がパーになるうえ、依頼者は殺されてしまうから。
それなのに何故、依頼が後を絶たないのか。
藁にも縋る思いでバーを探す人は、ネット上にあるコメント欄に、依頼したいということを書く。
そのネットはネット会社にも警察にもバレないよう、厳重なロックがされているらしい。
何でも、氷さんが幹部的存在を務める殺し屋組織のトップが、世界一のハッカーにロックしてくれるよう頼んだから、とか。
そのハッカーが誰なのか、私は知らないけど。
話を戻すと。
氷さんは週に2回、そのネット上に書き込まれたコメントを見て、コメントを書いた依頼者宛てに、バーの住所を送り、依頼者はバーに来て、正式に依頼を受けると言う仕組みらしい。
話が長くなったから、この辺でバーに入りますか。