元殺し屋と、殺し屋
「氷さーん」
「おお紅羽。悪いないきなり」
「氷さんが殺されるのは困りますから」
「相変わらず優しいなぁ紅羽は」
にこやかな笑みを浮かべる、イケメンの氷さん。
正直言って、恭真よりイケメンだよ。
しかし、相変わらず好きだなぁこのバーは。
店内は全て茶色い壁で統一され、赤いクッションが付いた椅子は高級そう。
まるで西部劇に出てきそうな店内だ。
黒い服に蝶ネクタイ姿の氷さんも、バーの雰囲気に合っている。
「で?
私の後に世界一の殺し屋になったって言う人はどこにいるの?」
「まだ来ていなくてな。
ソイツも紅羽と同じ高校生だから」
「そうなんだー」
私はその人が来るまでの間に、依頼者とターゲットが書かれた書類を見せてもらうことにした。
依頼者は、富岡(とみおか)カナコさん。
ここから近いペットショップに勤務する、19歳。
若いのに殺し屋に依頼なんて・・・。
ターゲットは、タケシという男とカナエという女。
カナコさんの双子のお姉さんらしい。
カナコさんが付き合っていたタケシを、カナエさんに奪われた恨み、か。