元殺し屋と、殺し屋
「私のこと、ダークって呼ばないでくれるかしら?」
「どうしてですか?」
「私は殺し屋の時、ダークと書かれた名刺を置いて行ったのよ?
知っているでしょ?
連続殺人鬼・ダークを。
神崎がダークと言っているのを警察の耳に届いたら、私逮捕されちゃうわ。
逮捕されたくないから、私のこと、普通に玉置って呼んでくれるかしら?」
「なるほど、そういうことでしたか。
・・・ごめんなさい、俺気が付かないで・・・」
「そんなに自分を責めないで・・・」
綺麗な紫色の瞳が、どんどん潤んでくる。
今にも泣きそうなほど。
男が泣くんじゃないわいっ!
「でも俺、玉置じゃつまらないですね・・・」
「つまらない?
呼び方につまらないもないと思うけど」
「紅羽、そう呼んでいいですか?」
「え?」
呼び捨て?
「俺のことは澪鵺と呼んでください」
「呼び捨てで呼ぶの・・・?」
「親しみがあるじゃないですか。
澪鵺ですよ、紅羽」
「・・・れい、や」
「ぎこちないですねえ。
澪鵺ってしっかり呼んでください」
「・・・澪鵺」