いまさら、私たち。

もう、いない。

数学の勉強がかなりはかどって、気がつけば深夜2時半をまわっていた。

政美「んーっ、そろそろ寝よーかなーっと」

伸びをしながら大あくびをする私の横で、カーテンが揺れる。

政美「あ、風…気持ちいい…」

はためくカーテンの隙間からチラッと見えるのは、うちから目と鼻の先にある隣の家。

そう、祐介ん家だ。

祐介本人はチャラ男でムカつく奴だけど、祐介のお父さんもお母さんもお兄さんも本当に、いい人で。

私の部屋のちょうど真向かいが祐介の部屋だから、小さい頃から窓を開ければいつでもおしゃべりできたんだっけ。

まあ、すぐに口喧嘩になっちゃってお母さんたちにうるさいって怒られたけどさ。

政美「…懐かしいなあ、あの頃が……。」

ポツリとつぶやく私の言葉に返事をするかのように、不意に風が強くなった。
カーテンがふわりと舞い上がり、大きく広がって……

そのむこうに見えた祐介の部屋。今はもう……誰も、いない。
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