いまさら、私たち。
【回想シーン】


四年前のあの日から、祐介はもう、私のお隣さんじゃない……

祐介「急だけど、出ていくことになったから。」

小6の祐介にある日突然そう言われたのは、2月の中旬頃だったっけな。

そんなこと突然言われたって、私の頭は混乱するばかりだった。

指先が冷たい雪にかじかんで、感覚を失って……心も麻痺したかのように、なんの感情も湧き起こらなくて。

祐介「…おれたち、いつも顔合わせりゃ喧嘩ばっかだったよな。ごめん。」

なんで…なんで、そんなこと言うの。なんで、謝るの。

祐介「でも今は、政美と言い合った毎日が、本当に懐かしく思えるっていうか…」

政美「……なによ。お礼なんていらないもん‼︎いつもみたいに文句…言えばいいじゃない‼︎うるさいのよ‼︎だいたいあんたはどうして今まで一言もっ…」


祐介「…泣くなよ。」

祐介にそう言われるまで、私は自分が泣いていることに気がつかなかったっけ。

政美「やめて、触らないで。」

私の頬の涙を拭う祐介の手を払いのけて、そのまま一目散に帰ってしまった私。

その日から小学校の卒業式まで私たちは一言も口をきかなくなった。


< 14 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop