橘恋歌
邸に戻ったら、中将はかんかんに怒っていました。
「姫様、一体今までどこで何をされていましたの?皆が必死になって探しておったのですよ。わかって…」
「…ごめんなさい」
いつもは素直ではない私が謝ったのに驚いたのでしょう。
中将はそのまま黙って、私の頬に手を伸ばしました。
「中将…?」
「まぁ、泥だらけ…お怪我はありませんか?お父上にばれないうちにお着替え遊ばせ」
私の大好きな、怖くない方の中将の声に戻っていました。