橘恋歌


邸に戻ったら、中将はかんかんに怒っていました。


「姫様、一体今までどこで何をされていましたの?皆が必死になって探しておったのですよ。わかって…」


「…ごめんなさい」


いつもは素直ではない私が謝ったのに驚いたのでしょう。


中将はそのまま黙って、私の頬に手を伸ばしました。


「中将…?」


「まぁ、泥だらけ…お怪我はありませんか?お父上にばれないうちにお着替え遊ばせ」


私の大好きな、怖くない方の中将の声に戻っていました。


< 12 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop