橘恋歌
左大臣家の姫君


あの時はあまりに幼すぎておりました。


世間のこと、自分の家のこと、自分の身分のこと――。


始めは何もかも分からなかったことが、成長するにつれて分かるようになりました。


「まぁ、姫は誠琵琶がお上手ですこと」


「まだお若いのに、姫のお作りになった歌はその場の者を魅了するものがありますわね」


“あの日”を幾日が過ぎた頃でしょうか。
隠れてやっていた大好きな蹴鞠は、父上から直々にもう辞めるよう仰せられたため、することはなくなってしまいました。



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