橘恋歌
「姫様は何をされてもお上手ですのね」
「誠に。これぞ…」
“帝の后に相応しい”
私に控える女房たちは、口々に言いました。
初めて言われたときは、忘れかけていた感情が一瞬だけ蘇りました。
――私がみ…かどの后…
――だから、昔からあんなに厳しく…
――と言うことは…
それに気付いた私は、自嘲にも似た笑いを浮かべてから、止めていた指で再び琴を爪弾き初めました。
――あの方…橘の君にはもう逢えない。