橘恋歌


「左大臣様…父上もこれで安心なされますわね」


――そうだ。


――私の父上は左大臣。


――その娘が帝に入内するべく育てられるなんて当然のこと、何故今まで気付かなんだ…


「姫様の御年ですと帝ではなく、東宮様への入内になりますわ。未来の中宮と言うところですわね」


嬉しげに言う中将の言葉も耳に入れず、私は琴を爪弾き続けました。


< 17 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop