橘恋歌
東宮様の最初の后である私の今日からの居場所は弘徽殿になります。
弘徽殿に着いてからは中将の長い長いお話です。
「――ですから、東宮様がこうなさったら……」
「お分かりですか、女御様?」
「……あっ、分かっ…たわ」
一瞬誰のことか分かりませんでした。
中将にもこれからは“女御様”と呼ばれるのか、と少しその響きが虚しく感じられます。
「では、今宵についてですが、東宮様のお召しが…」
その言葉にも、どきりとしました。
入内したからには心得てはいましたが、いざ言われると怖いものにございました。