橘恋歌
「……え…?」
「まだ…思い出してはくれませぬか」
恐る恐る袖を下ろしたその先にあったは、大人びて凛々しくなってはいるものの、あの日のままの、この優しい笑顔は紛れもなく…
「橘…の君……?」
間違いない。
私が、ずっと待っていた…。
「橘の君…ですか。随分と粋な呼び名を考えて下さっていたのですね。まぁ、そう言う私も、この七年間ずっと蹴鞠の上手い“橘の上”を想って参ったのですけれど」
やはり、橘の君…。
「思い出すなどとんでもない……貴方様を想わない日などございませんでした。ずっと…ずっとお慕いしておりました…」