橘恋歌


「……え…?」


「まだ…思い出してはくれませぬか」


恐る恐る袖を下ろしたその先にあったは、大人びて凛々しくなってはいるものの、あの日のままの、この優しい笑顔は紛れもなく…


「橘…の君……?」


間違いない。
私が、ずっと待っていた…。


「橘の君…ですか。随分と粋な呼び名を考えて下さっていたのですね。まぁ、そう言う私も、この七年間ずっと蹴鞠の上手い“橘の上”を想って参ったのですけれど」


やはり、橘の君…。


「思い出すなどとんでもない……貴方様を想わない日などございませんでした。ずっと…ずっとお慕いしておりました…」


< 23 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop