橘恋歌
「わ…っ、私は」
――東宮様の后…弘徽殿女御と言う立場。
いくら橘の君とは言え、東宮様以外の男性と顔を合わせるなど…ましてや抱擁を交わすするなど以ての外。
罪の意識と、一緒にいたいという気持ちの葛藤に襲われていました。
「私は…東宮様へ入内する身分です。もう…逢うことはできませぬ」
橘の君は何も仰らない。
「少しの時間でしたが、お逢いできて本当に嬉しゅうございました。あの日蹴鞠をしたことも…貴方様のことも決して忘れません」