橘恋歌
「去る必要はありません。…私だってずっと待っていたのですよ。左大臣家の橘の上を我が妻に迎える、今日と言う日を」
「…え?」
まさか。
いいえ、そんなはずは…。
だけど。橘の君は、目の前の愛しい方はもしかして…。
「…と、東宮、様…?」
「貴女に逢う日を楽しみにしていました、女御」
俄には信じ難いことでした。
橘の君が東宮様だったなんて…。
と言うことは、私は橘の君の后となるわけで……頭が働きません。
「…そろそろ私も行かなければ。今宵、ゆっくり話すこととしましょう」