ずっと[短編]
「何であなたがここに」


 そう言おうとしたとき、今日の出来事を思い出す。


 これは幻覚なのだ。


 だから見えているのはあたしだけ。


 あたしの綾に対する罪悪感が見せた幻覚。


 そう思い、あたしは拓を見た。


 拓の視線はまっすぐ綾に向けられている。


 拓の唇が震え、そこから聞きたくなかった名前が漏れた。
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