ずっと[短編]
「分かった」



 無理。

 でもそんなことは口に出せずに

 ケーキと箱をテーブルのところまで持ってきた。

 美智子が食べたがってくれればいいのに、という願いを込めて。


 あたしがフォークにチョコレートケーキを載せて口に運ぼうとしたときだった。

「生きているって素晴らしいよね。おいしそう」

 甘えたような声。

 あたしは無視して食べる。

「おいしい? どんな味?」

 いちいち聞いてくる。美智子がいる前でそんなこと言えるわけない。

「大丈夫? 顔色悪いよ」

「大丈夫」

 あたしは美智子の問いかけに答えた。
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