(仮)恋の幻想曲
「………は、早く行こっ 暦」
「…あぁ」
これは逃げだ。
記憶は取り戻したい……でも怖い。その事を家族は悟ってるから私と暦が小さい頃の話はしない。
(あー。バカだ私)
(あークソ! バカだ俺)
流石は双子。
思ってる事が一緒だが本人達は知らない。
「あ、もう着いた」
「ほんとだ」
色々あったけど無事に常盤高校へ到着した。着くまで気まずかったけどもう大丈夫だろう。
「やっぱり名門は凄いね」
まだ外だけどその凄さは分かる。
校門を通ると見えるのは噴水と無数のベンチ。その後ろにそびえ建つのは学舎である校舎。見た感じだと5階はありそう。
「私、ちょっと自信無くしたかも……ん?
そんなキョロキョロしてどうした」
暦の様子がおかしいです。
まるで何かを恐れてるみたいに警戒している。
「暦………もしかしてトイレ?」
「違うわ! アイツらが来る前に急いで教室に行こうぜ」
心なしか汗も凄い……ここまで暦が恐れる物って気になる。