裏腹な彼との恋愛設計図
見学会も無事終わり、柊さんの怪我も目立たなくなってきた七月中旬。
相変わらず恋に進展はなく、平凡な毎日を過ごしている。
そんなある日の午後、事務仕事を淡々とこなしていると、三時を回った頃に玄関のドアが開く音がした。
たまたまオフィスのカウンター付近でコピーを取っていた柊さんが、そのまま玄関へ向かう。
「いらっしゃいませ」
「家を建てたいと思って住宅会社をいくつか回ってるんですけど、こちらのお話を聞くことって出来ますか?」
「はい、もちろん。ただいま案内しますので、少々お待ちください」
笑顔で会釈する柊さん。まだコピーの途中みたいだし、私が代わりに案内しよう。
暗黙の了解で私は席を立ち、柊さんと代わるべくオフィスから出る。
来客は男性一人だ。
「いらっしゃいませ! どうぞこちらのスリッパを──」
……あれ? この男の人、見たことある……っていうか、まさか。
スリッパを用意しようと屈めていた身体を起こし、一瞬見ただけの男性の顔をもう一度よく見ようと目線を上げた。すると。