裏腹な彼との恋愛設計図
「でも、あれから結局噂が広まっちゃって、うまくいかなかったんだよね……」


アボカドが乗ったブルスケッタを小さく一口かじりつつ、私は記憶を十年前に巻き戻す。

たくさんの後悔が残る、あの頃に。





私がよく三好くんと話すのを見ていたクラスメイトは、当然私達のことを噂し始める。

けれど、朝海も『気にすることないよ』と言ってくれたし、私もそう心に決めて、変わらず三好くんと接していた。


そんな秋の日のとある放課後、図書室に本を返しに行くと、長机に一人座って勉強している三好くんを発見。

私は後ろからそっと彼に近付いて、彼の手元を覗き込んだ。

綺麗な字で書かれた難しい数式が、ノートにたくさん並んでいる。

私は身を屈めて思わず話し掛けた。


「すごい……こんな難しい問題、よく解けるね!」

「うわ」


私を振り仰ぎ、控えめに驚きの声を上げる三好くんに、「ごめん」と謝って笑った。

彼のノートを再び覗き込みながら、私は何気ない調子で言う。


「私、数学全然ダメなの。今度三好くんに教えてもらおうかな」

「……別の人にしなよ」

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