裏腹な彼との恋愛設計図
カウンターの向こうで、男性店員がシェーカーを振るのをぼんやり眺めながら、頭の中では三好くんを思い浮かべる。


「もっと早くに“好き”って言えてたら、今とは違う未来があったのかなぁ……」


初めて手を繋いだあの日、私が告白していたら。

男子にからかわれた時も、“好きで何が悪い!”とハッキリ言えていたら……。

そんな後悔ばかりが残っていて、私はずっと三好くんのことを忘れられずにいたのだ。

──柊さんに会うまでは。


「でも、紗羽にも本当に好きだって思える人が現れたんでしょ? よかったじゃない」


私の心を見透かしたように、朝海がにこりと微笑んだ。

三好くんとの思い出は宝箱にしまって、私も微笑み返して頷く。


「……うん、そうだね」

「お、好きなヤツはいるんだ。この間街で俺が見かけたヤツ?」


興味深そうに身を乗り出す翔吾くんに、私は首を横に振ってカマンベールチーズに手を伸ばす。


「違うよ。あの人は同じ職場で……お友達かな」

「じゃあアレだ、俺が話したあの美形プランナー」


口に入れる直前、チーズがポロリとカウンターに落ちた。

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