裏腹な彼との恋愛設計図
キッチンに向かい、黒光りする冷蔵庫の扉を開け、缶ビールを取ろうと手を伸ばした時。

もうだいぶ薄くなってきた腕の傷が目に留まった。

それと同時に思い出す、あの子の顔と甘い香り。


……あからさまに欲情した顔してたよな、アイツ。

あの時、キスの一つぐらいしてやろうかという衝動に駆られてしまった。


“私、雰囲気でただ流されたわけじゃないですから”


本当かどうかもよくわからないあんな言葉を、気にしてしまっている自分もどうかしてる。



──鈴森紗羽。

数ヶ月前に現れた、精神年齢が低くて少々オツムの弱そうなドMオンナ。

彼女は子供みたいに素直で、無邪気で……どうにも俺の心を乱す。


「厄介な女だよ、本当に……」


ぽつりと呟いてビールを手に取り、プルタブを開ける。

そういえば、明日はまた彼女の元カレだというあの男が来る予定だ。

どちらかと言えばこっちの方が厄介か……。


もやもやした感情と、一日の疲れも流してしまおうと、俺は黄金の液体を喉に流し込むのだった。


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