裏腹な彼との恋愛設計図
……そう、俺はたしかに苛立ちを感じていた。

最初こそ何も気にしないようにして振る舞っていたものの、無意識に顔に出てしまっていたのだろうか。


すっかり接客用の笑顔を作れないでいる俺を、金井さんは真意を問うようにまっすぐ見据える。


「きっとあなたは、紗羽のことを仕事仲間以上に思ってる。違いますかね?」


──そんなことは、前からとっくに気付いている。

ずっと前から、自分が彼女に特別な感情を抱いていることには。

ただ、それを認めたくなかっただけだ。


一つ息を吸い込むと、再び笑顔を作って言う。


「それを、あなたに言う必要がありますか?」


一瞬、面食らったような顔をした金井さんは、すぐに笑って頷いた。


「ま、そうですよね。俺は別にどっちでもいいんすよ。ただちょっと、柊さんのスカしてるとこが気に食わなくて、挑発したくなったんです。すいません」


あっさりと謝って軽く頭を下げた彼は、コーヒーを啜りながらカタログを捲り始める。

完璧にペースを乱された俺は、飄々としたこの男を眺めて小さくため息を吐き出した。


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