裏腹な彼との恋愛設計図
すると、現場から戻ってきた矢城が、何も知らず笑顔で中へ入ってくる。


「こんにちは。打ち合わせ終わったんですね、お疲れ様でし──」

「あ!」


会釈した矢城を見て、金井さんが声を上げた。

キョトンとする俺達。


「君、この間紗羽と歩いてた人だ」

「え!?」

「いやー相手にされなくて可哀相だけど、まぁ弟ってレッテル貼られちゃ仕方ないよな。君カッコイイし、すぐ次の恋が見付かるよ。紗羽のことは諦めな」

「はぁぁ!?」


愕然とする矢城をさておき、「じゃ!」と足取り軽く去っていく金井さん。

彼も見ていたのか、矢城と二人でいる場面を……。


「ちょっ、柊さん! 何なんすかあの人!! 何で初対面の相手にいらないアドバイスされなきゃいけないんすか!?」


俺の腕をがしっと掴み、取り乱す矢城を気の毒な目で見てしまう。


「ってか“紗羽”って何、“紗羽”って! 何者なんだよアイツ!?」

「……ただの野蛮人だ、気にするな」


怒りの治まらない矢城の腕を引きはがしつつ、俺は今日何度目かわからないため息を吐き出すのだった。


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