裏腹な彼との恋愛設計図
「そういえば今年の二級建築士の設計製図の課題、レストラン併用住宅になったらしいわね」


……それは、俺も調べたから知っている。


学科試験と、与えられた課題の設計図を作成する設計製図の試験の二回とも合格すると、二級建築士の国家資格が得られる。

絵梨子さんや古賀さんはすでにこの試験に合格していて、さらに上の一級建築士の資格を持っているのが社長だ。

インテリアプランナーの資格を持っていて実務経験がある俺も、受験資格はあるのだが。


「あれすっごい難しいのよねぇ、懐かしいわ。隼人くんはまだ受ける気ないの?」

「……えぇ。今はこのプランナーの仕事が一番合ってると思うんで」


──本当は、絵梨子さんのような設計士になりたいと思っていた。

自分の家族の家を、自分で設計することが出来たらいいな、と。


しかし、家を出て親を捨てた今の俺には、家族はいないも同然。

いつの間にか設計することの意義を見失ってしまい、一歩を踏み出せずにいる足は、この先ずっと止まったままでもおかしくない状態なのだ。

それでも、きっちり試験問題を調べてしまうのは、まだ煮え切らない想いがあるからなのかもしれない。

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