裏腹な彼との恋愛設計図
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すっかり梅雨も明け、朝から蝉の鳴き声が賑やかな七月下旬のある日、朝礼が終わると社長が俺を呼んだ。
オフィス全体を見渡せる社長のデスクに近付くと、彼は肘をついて顔の前で両手を組み、俺を見上げる。
「実は柊くんにお願いがあってね。新科店のことなんだが……」
新科(アラシナ)店というのは、この本社以外にもう一つある店舗のことだ。
年二回行われる会議で向こうに行ったりもしているが、お願いというのはもしかして。
「最近新しいプランナーを雇ったんだが、どうもミスが多くてね。ショールームも併設されたおかげで、向こうはてんやわんやらしいんだよ」
やはり。その話なら、実はもうある人から聞いたから知っている。
新科店には、うちが契約しているメーカーのショールームが併設されたばかり。
あまり広くはないが、キッチンやお風呂、トイレなど、住宅設備のサンプルを見学することが出来るものだ。
それによって若干体系が変わり、慣れないところに新人が入ったから、なかなか上手くいっていないようだと……
ショールームでアドバイザーとして働く、杏奈(アンナ)が言っていた。