裏腹な彼との恋愛設計図
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今から一ヶ月ほど前の六月下旬、一人で残業しているとスマホに懐かしい名前が表示された。
別れてからもそのまま登録されっぱなしだった、杏奈の携帯番号。
特に出ない理由も見付からず、通話をタップした。
『──まだ変わってなかったのね、番号』
数年ぶりに電話で聞いた杏奈の声は、あの頃と何も変わっていない。
それでも、懐かしさ以外の感情が沸いてこない自分に、どこかほっとしていた。
「……久しぶりだな。三年ぶりくらいか」
『そうだね。元気?』
「あぁ。どうした、突然」
『隼人の声が聞きたくなったの』
甘えたような声で言う杏奈に、俺は椅子の背もたれに身体を預け、あからさまにため息をつく。
「そういう冗談を言ってんなら切る」
『あはは! 相変わらず冷たいのね~』
あぁ、こうやって笑い飛ばすのが杏奈だった……と、なんだか心地良ささえ感じる。
俺が電話で無駄話するのは嫌いだということをわかっている彼女は、すぐに本題を切り出した。