裏腹な彼との恋愛設計図
翌週、六月最後の水曜日、乗り気ではないながらも、俺は杏奈と待ち合わせたカフェにいた。
頼んだアイスコーヒーはすぐに用意され、透明なカップに入ったそれを受け取る。
使い古されたようで上品なテーブルや椅子が味を出している、シャビーシックな雰囲気の店内。
インテリアを観察してしまうのは癖のようなもので、店内をぐるりと眺めつつ杏奈が待つ席へ向かった。
駅前の通りに面したガラス張りの席で、抹茶ラテらしき飲み物をお供に、彼女は道行く人を眺めている。
前は肩まであった髪がバッサリ切られているが、意志の強そうな切れ長の瞳と、紅いグロスが乗った唇は昔のままだ。
向かい側の椅子を引いた俺に気付くと、ショートヘアが際立たせる小顔がこちらを向き、にこりと笑う。
「隼人! 相変わらずイイオトコね~」
「杏奈も相変わらず気が強そうだな」
「……少しはお世辞ってものを言う努力をしたらどう?」
笑顔が一変、杏奈は片手で頬杖をつきながら据わった目になる。
「で、この間の続きは?」
「もう少し世間話してからでもいいじゃない」
「お前が世間話し出したら日が暮れて朝になっちまう」
「そんなにお喋りじゃないわよ!」