裏腹な彼との恋愛設計図

翌週、六月最後の水曜日、乗り気ではないながらも、俺は杏奈と待ち合わせたカフェにいた。

頼んだアイスコーヒーはすぐに用意され、透明なカップに入ったそれを受け取る。


使い古されたようで上品なテーブルや椅子が味を出している、シャビーシックな雰囲気の店内。

インテリアを観察してしまうのは癖のようなもので、店内をぐるりと眺めつつ杏奈が待つ席へ向かった。


駅前の通りに面したガラス張りの席で、抹茶ラテらしき飲み物をお供に、彼女は道行く人を眺めている。

前は肩まであった髪がバッサリ切られているが、意志の強そうな切れ長の瞳と、紅いグロスが乗った唇は昔のままだ。

向かい側の椅子を引いた俺に気付くと、ショートヘアが際立たせる小顔がこちらを向き、にこりと笑う。


「隼人! 相変わらずイイオトコね~」

「杏奈も相変わらず気が強そうだな」

「……少しはお世辞ってものを言う努力をしたらどう?」


笑顔が一変、杏奈は片手で頬杖をつきながら据わった目になる。


「で、この間の続きは?」

「もう少し世間話してからでもいいじゃない」

「お前が世間話し出したら日が暮れて朝になっちまう」

「そんなにお喋りじゃないわよ!」

< 141 / 280 >

この作品をシェア

pagetop