裏腹な彼との恋愛設計図
「ま、根気よく教えるしかないんじゃねーの」

「それが、転職先には八月中旬にはいかなきゃいけないから、そうもいかないみたいよ」


ということは、引き継ぎ期間はあと一ヶ月半くらいか。

なんとかなると思うが……でもそれは本人のやる気次第だろう。


コーヒーを飲みながら、資格を取った当時の自分に置き換えて考えを巡らせていると。

杏奈がテーブルに少し身を乗り出すようにして、意味深な笑みを浮かべた。


「だから、隼人がこっちに来ればいいと思うの」


……何を言い出すかと思えば。

社長からの辞令が下されれば別だが、自分から行く気はないぞ。


「そんな簡単な話じゃない」

「もちろんわかってる。でも、そうすれば隼人の評判はかなり上がるんじゃない?」

「そんなことはどうでもいい。上げなきゃいけないのは、社内より客からの評判と信頼だろ」


トンッとカップを置いて言い切ると、俺がそう言うのを半ばわかっていたように、杏奈は「そうなんだけどさ」と頷いた。


「でも、隼人に新科店に来てほしいと思う理由はそれだけじゃない」

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