裏腹な彼との恋愛設計図
まだ何か重要なことがありそうな言い方に、目線を上げて彼女を見やる。


「つい最近新科店に来たお客さんで、『柊隼人はいますか?』って尋ねてきた人がいるらしいの」

「……え?」


まったく予想外の話に、間抜けな声が漏れてしまった。

俺のことを聞いてきただって? いったい誰が?


「それを聞かれたのが例の新人のコだったから、いないって答えたらしいんだけど。後から本社に隼人がいるって聞いて、教えてあげればよかったかもって言ってた。
もしかしたら、隼人の知り合いが新築のことでお願いしたいのかなって思ったんだけど……心当たりない?」

「いや、何も……」


もし俺に頼みたいのなら、直接連絡してくるだろう。だが、誰からもそんなことは言われていない。

不思議な出来事に、俺は眉をひそめる。


「誰なんだよ……名前は?」

「えっとね、名前は……あれ、ど忘れしちゃった」

「はぁ?」

「ちょっと待って、今思い出す!」


うーん、とこめかみに指をあてて唸る杏奈に呆れて、再びカップに手を伸ばす俺。

前から肝心なところで抜けてんだよな、コイツ……。

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