裏腹な彼との恋愛設計図
思い当たる人物が一人だけいる。きっとその予想は正しいだろう。

でも、職場にまで来て俺を探していたなんて……いったい何の用だ?

まったく想像がつかず、黙って考え込む俺の顔を杏奈が覗き込む。


「どうしたの? さっきから変よ。やっぱり何か心当たりあるんでしょ」

「……お前には関係ない」

「そうだろうけど! 隼人明らかにおかしいんだもん、気にしない方が無理よ」


俺が再び黙り込むと、杏奈は一つ息を吐き出して、諦めたようにトイレへ向かっていった。


──あの人、俺がミライトホームにいることを知っていたのか……。きっと母親が教えていたんだな。

でも、何故今さら俺を探している?

それとも、住宅関係のことで何かあって、店に来たついでに俺のことを聞いたのだろうか。

もし重要な用事なら母親を通じて連絡を取ってくるだろうから、後者の方が合っているかもしれない。


汗をかくカップを見るともなく眺めて思案するが、わかるはずもない。

何にせよ、俺は彼と会う気はないのだが。

そのうち杏奈が戻ってきて、再び俺を真正面から見据えながら、試すように言う。

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