裏腹な彼との恋愛設計図
「あいつも紗羽ちゃんのこと振り向かせたくて必死なんだよな。悪いけど、やれるだけやらせてみてくれる? そうすれば、あいつも納得して諦められるだろうからさ」

「古賀さん……」


いつもは矢城くんのことからかってばっかりだけど、本当はちゃんと彼の気持ちも理解しているんだよね。

矢城くんは今の私と同じ。好きな人にどうにかして近付きたいと思っている。

だから私も、同情とかじゃなく、しっかりと向き合わなければいけないんだ。


私は古賀さんに向かって頷くと、矢城くんと一緒に近くのスーパーまで買い出しに出掛けた。




「……寂しい、ですよね。柊さんがいなくなるの」


缶ビールのパックをカゴに入れながら、突然矢城くんが言った。

なんとなく新発売のカクテルに手を伸ばしながら、私は苦笑してみせる。


「まぁ、ね」

「告白しないんですか?」


ひんやりと冷たい缶に手を触れたまま、一瞬動きを止める。

そういえば、告白するなんてことは頭になかったな……。


「……しないよ。だって今告白しても、フラれるのは目に見えてるし」

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