裏腹な彼との恋愛設計図
残っていたのはちょうど線香花火で、束を分け合って火薬の部分に火をつけた。

やがて丸くなったオレンジ色の玉が、ぱしぱしと小さな音を立てて弾ける。

さっきまでの賑やかさが嘘のように、静かにゆっくりと時が流れていく。


「わー、大きい玉」

「あ、落ちた」

「あはは。……きれい」

「そうだな」


ぽつりぽつりと言葉を交わすだけでも、胸にも線香花火の明かりが灯ったように温かくなった。

すぐ隣に目を向ければ、オレンジ色に照らされた、伏し目がちの美麗な顔が闇夜に浮かぶ。


……好き。たまらなく好きだ。

こうして見ているだけで、何故だか目頭が熱くなるくらいに。


彼を見つめていると、ふいに高校時代のことを思い出した。

そういえば私、前も同じようなことを言った気がする。

“線香花火は静かにやるものだから、話さなくてもいいよ”って──三好くんに、そう言ったっけ。


……え? まさか、柊さんはそれを知っている──?


降って湧いた考えに自分で驚いて顔を上げると、こちらを向いた彼と視線が交わった。

ドキンと心臓が跳ね、咄嗟に目を逸らしてしまう。

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