裏腹な彼との恋愛設計図
──ドクン、と大きく胸が鳴る。

“鈴森さん”と呼んでいたのは、好きだった彼。

まさか、まさか柊さんは……!


「まだわかんねぇの?」


ぶっきらぼうに言った彼は、突然前髪をくしゃくしゃと掻き乱し、胸ポケットから取り出した黒縁眼鏡を掛けた。

はっきりと思い出せなくなっていた姿が鮮明に蘇ってくる。

髪はやぼったいほど長くないし、顔は全体的にスッキリしているけれど、あの頃の三好くんと重なる。

眼鏡の奥の綺麗な瞳は、たしかに同じだ──。


「これでどう?」


なんとか首を動かしてコクコクと頷く。

そしてすぐに眼鏡を外す彼を、私はただ呆然と見ていることしか出来なかった。


「し、信じられない……!」


まさか、柊さんと三好くんが同一人物だったなんて──!!


「ちょっと紗羽、どういうこと!?」


私の腕を掴んで問い質す朝海だけど、それは私も聞きたいよ!


二人の共通点、それは“隼人”という名前。

でもそれは決して珍しくない名前だし、ただの偶然だと思ってまったく気にしなかった。


だって、見た目も名字も違う。

それに何より、三好くんは同級生だったけれど、柊さんは間違いなく年上。

だから同一人物だなんて、今この瞬間までこれっぽっちも思わなかった。

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