裏腹な彼との恋愛設計図
衝撃的な事実に、私も胸がぎゅうっと苦しくなる。


「普通に生活出来るようになっても、留年したってのは結構自分の中でショックでさ。皆は卒業してんのに、俺だけ年下の奴らと混ざってもう一年やらなきゃいけないなんて、なんか屈辱的だった」


……そうだよね。学校に戻れた時、仲が良かっただろう友達は、もう誰もいないのだから。

もし自分だったらと思うと、その孤独感に耐えられるかわからない。


「クラス替えがあったのは助かったけどな」

「もしかして、誰とも関わらなかったのはそのせい……?」

「そう。地味になって存在感消してれば、俺がどこのクラスだったか気にする奴はいないだろうし、留年したってことも気付かれないと思ったから」


それだけじゃない、と柊さんは言う。

記憶障害の治療をしている頃、周りが自分に信じ込ませようとしていることが本当なのか嘘なのかがわからず、疑心暗鬼になっていたのだと。


「『実は付き合ってたんだよ』って、嘘を信じ込ませようとする女友達もいたな」

「そんな……」


そんなことをされたら、人間不信にだってなりかねない。

実際、症状が治ってからも人を疑い深くなってしまい、それが嫌で、誰とも深く関わることを避けていたらしかった。

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