裏腹な彼との恋愛設計図
「あとは親の問題。母親が、俺が事故に遭って苦しんでるのは運転してた父親のせいだって責めて、それからずっとうまくいってなかったんだ。
そういう諸々で軽くうつっぽくなってて、誰とも話したくなかった。結局、両親は離婚したけどな」

「それで名字が“三好”から“柊”に変わったんですね……」


自分の身体のことに加えて、学校のこと、両親のこと──。

様々なことが重なって、あの頃の“三好隼人”が生まれたんだ。


柊さんは早くもビールを飲み干し、トンッと空のグラスを置いて言う。


「それなのに……やたら俺に付きまとってくる奴が一人だけいた」

「……私?」


それを肯定するように、こちらを向いた彼と視線が絡まり合い、トクンと胸が鳴った。

徐々に、“柊さん”と“三好くん”の姿が重なっていく。


「こんな暗くてジメジメした俺に、何でくっついてくんの?って。こいつ物好きだなって思ってた」

「柊さんが床下だとするなら、私はそこに生息するコケってとこですかね……」

「キッチンの水回りに住み着くゴキブリでもいいな」

「そ、それは言い過ぎです!」

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