裏腹な彼との恋愛設計図
少しだけ茶化してみると、柊さんはおかしそうにふっと笑いを漏らした。

たまに気を許したような表情を見せてくれると、すごく安心する。過去を話すのはきっと辛いだろうから。


「高校卒業してあのオタクみたいな格好をやめたら、どんどん周りに人が集まったよ。
でも今は営業やってるし、見た目も愛想も良くしなきゃいけないけど、根はこんなだから多少無理してるとこもあるんだ。目立つこととか嫌いだし」


あぁ、だから写真を撮られるのも嫌なのかな。

ニュースレターに写真を載せようとして拒否されたことを思い出す。

あの時、もう柊さんは私のことに気付いていたんだよね……?


「……柊さん、私のこと覚えててくれたんですね」


運ばれてきた、ニ杯目のジンライムに口をつけながら、「バカじゃなきゃ名前くらい覚えてる」と言う柊さん。

でも、十年も経っているのに私の名前を覚えていてくれたことは、単純に嬉しい。

氷と一緒に透明な海に泳ぐ、緑色の三日月を見つめながら、柊さんはわずかに苦笑を浮かべる。

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