裏腹な彼との恋愛設計図
ガラスペンダントの灯りのように
──十年ぶりに、花火をやった。
今まで避けていたものも、あいつとなら本当に楽しい思い出を作れそうな気がした。
高三の初夏、父親に運転を頼んで大学のオープンキャンパスに行った帰りのこと。
今年最初の小さな花火大会がちょうど同じ日に重なっていて、車の窓からそれを眺めていた。
その時、あの忌まわしい事故が起こったのだ。
父親のよそ見が原因で俺達の車が対向車線にはみ出し、ハンドルを切り返したものの電柱に衝突。
俺は頭を打って、一時的な記憶障害に。
それ以来、花火を見ると事故のことを思い出すから嫌いになったのだ。
もう一度やり直した高三の夏、文化祭の打ち上げでクラスの奴らと花火をすることになった時も、俺は帰る気満々だった。
俺なんかがいなくても、誰も気付くことはないから。
……しかし。
『三好くん、一緒に花火やろうよ』
『もし話したくないなら、線香花火やろ? あれは静かにやるものだから、会話がなくてもいいでしょ?』
鈴森紗羽は帰ろうとしていた俺を呼び止め、線香花火の束を差し出しながら、とても温かい笑顔でそう言った。