裏腹な彼との恋愛設計図
「……だから、会いたくなかったんだよ」


一度タガが外れたら、こんなふうにお前を求めてしまうのがわかっていたから。

コントロールが効かず、自分が自分じゃなくなるような感覚は、事故直後に感じたそれと似ているような気がして少し怖れていた。


でも今は、このまま突っ走りたい衝動に駆られている。

過去のことはどうでもいい。今はただ、目の前の彼女が欲しい──。


いつもとは違う髪型も、露出度が高い今日のパーティードレス姿も、無性に欲求を掻き立てる。

白い首筋に唇を這わせ、太ももに手を滑らせ。

ソファーに押し倒す勢いで、貪るように唇を重ね合わせていた。


──その時、俺の理性を引き戻したのは母親からの電話。

感謝するべきなのか、恨むべきか。

あれほどまでに高ぶっていた欲求は、冷水を浴びせられたように急激に冷めていった。


またいつものどうでもいい世間話か……と思ったのだが、今日は少し様子が違う。

いつもなら、留守電を残すだけで何度も掛けてきたりはしない。なのに今日は、俺に“出てくれ”と訴えるように鳴り続けていた。

< 221 / 280 >

この作品をシェア

pagetop