裏腹な彼との恋愛設計図
杏奈から聞いた時、俺を尋ねてきたのが父親だということはわかった。

彼はもう新しい家庭を築いていて、その家族のための家でも建てることになったのだろう。

だから、お互いに気まずくならないように、俺がいないか確認していたのではないか。

考えられるのはそれくらいだったのだが。


「それは……私達の家を建てようとしてるんだと思うわ」


“私達”?

意味がわからず、ハンドルを握る母さんを見やる。

彼女は前方に光るテールライトを目に映しながら、ほんの少しはにかんで言う。


「実はね。私とお父さん、もう一度やり直そうかっていう話をしてるの」


──一瞬、追い越していく車の音が遥か遠くの方に聞こえた。


「は!?」

「ごめん、勝手すぎるわよね。私が離婚を切り出したのに、またやり直したいだなんて」


いやいやいや、ちょっと待て!

衝撃的すぎて頭がバーストしそうだが、よく考えろ俺。

ドアに肘をつき、頭痛を堪えるように額に手をあてながら必死に脳を回転させる。


「だってアンタ、他に男いるんじゃなかったのかよ? 二人で会ってただろ、昔」

「やっぱり気付いてたのね……。バレないようにしてたつもりだったんだけどな」

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