裏腹な彼との恋愛設計図
あれでバレないようにしてたのかよ、というツッコミは心の中に留めておこう。

母さんは申し訳なさそうに眉を下げて、ちらりとこちらを向く。


「それで、私に嫌気がさして家を出ていったのね？」

「別に、嫌気がさしたわけじゃない。俺がいたら邪魔になると思っただけで。……でも、それは俺の思い過ごしだったってことか？」


俺の問い掛けに、母さんは少し迷いながら、言葉を選ぶようにして話し出した。


「……お父さんと別れて、隼人も専門に通い始めて。一人の時間も欲しかったから最初は快適だったけど、そのうちどうしようもなく寂しくなってね。職場で良くしてくれてたあの社員さんに色々と相談してたの」

「相談……」

「そう。あの人もとても優しい人で、たぶん私に好意を持ってくれていたと思う。私もそれに甘えたくなった時もあったわ。
でもやっぱり何かが違って、結局あの人とはどうにもならずに終わったのよ」


きっと母さんも新しい生活をしているだろうと思っていたのに、そんなものは始まってもいなかった。

俺が独りよがりなだけだったのか……急激に罪悪感が湧き上がる。


「じゃあ、母さんはずっと一人で……？」

「一人だったけど、それも必要だったと思うわ。ゆっくり時間をかけて、お父さんともう一度向き合うことが出来たから」

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