裏腹な彼との恋愛設計図
「お父さんはずっとその愛情を持ち続けてくれているの。十年が経つ、今もずっと。それとセットで、あの事故の罪悪感もね」


事故の記憶が蘇り、ほんの少しあの頃の古傷が疼いた。

インターチェンジに差し掛かり、車は徐々にスピードを落とす。


「隼人が住宅関係の仕事に就いたって話をしたら、いつか家を建ててもらいたいって言ってた。皆が帰る場所を、もう一度作れたらいいなって。
あなたの職場に行ったのはそのためじゃないかしら。あなたに許してもらって、もう一度三人でやり直そうって話したかったのよ。きっと、ものすごく勇気出して行ったと思うわ」


……そうだろうな。まだ俺に恨まれていると思っているのなら。

突き返されるのを覚悟で俺の名前を聞いたことだろう。


「俺はもう恨んだりしてない……って、言ってやらないとな」

「そうね。そのためにも、無事に手術が終わるといいけど」


もうすぐ病院に着くと思うと不安と緊張が増すが、そのわりに心は落ち着いている。

ずっと未完成のままだった未来の設計図に、少しずつ手を入れていくような気分。

窓を流れる夜の景色を眺めながら、十年ぶりに父親に会う時を静かに待った。


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