裏腹な彼との恋愛設計図
「え……急性虫垂炎?」
病院に着き、ある部屋に通されて医師からの説明を受けた俺達は、一様に目を点にしていた。
そんな俺達に、四十代くらいの男性医師が和やかな表情で言う。
「えぇ、いわゆる盲腸です」
「盲腸!?」
俺達は再び繰り返した。
盲腸って……比較的簡単な手術だろ?
それでそんなに動揺してたなんて、どんだけ怖がりなんだよあの人。
母さんと目を見合わせて、二人で大きく息を吐き出しながら脱力した。
だがその後の説明で、炎症がかなり進行していて、腹膜炎の一歩手前という危ない状態であることがわかった。
手術してみないとどれだけ膿が溜まっているかもわからないらしく、母さんへの電話で『切ってみないとわからない』と言っていたのはこのことだったのかと納得。
とりあえず命に係わるほどではないようで、俺達は安堵したのだった。
時計の針は十一時を指そうとしていて、術後もしばらくは麻酔が効いている状態ということで、翌日の朝一で見舞いに来ることに。
「私は入院の準備もあるしお父さんのアパートに泊まるけど、隼人はどうする?」
「俺はホテルでいいよ。……あ」
やばい、会社に連絡するのを忘れていた。