裏腹な彼との恋愛設計図
明日も仕事だが、緊急のことだから休みをもらおう。

それだけじゃなく、このまま新科店へ行くことにした方がいいかもしれない。

母さんだってそんなに長くは仕事を休めないだろうから、俺がこっちにいれば父さんに何かあった場合も対応しやすいし。

向井さんにはほとんど引き継ぎは終えているから、もういつ俺が抜けても問題ないはず。


夜中で申し訳なかったが、社長に連絡して事情を話すと、快く承諾してくれた。

皆には余計な心配をかけさせないように、詳しいことは話さないでおいてもらうことにして。


仕事のことはこれでいいとして……鈴森とあんなカタチで別れてきてしまったことに、何とも言えない歯痒さを感じる。

しばらく会えなくなるが、その間に俺は過去を整理しよう。

落ち着いたら、ちゃんと会いに行くから。


彼女の顔やぬくもりを思い出しながら、もどかしくも心穏やかな夜を過ごした。


 *


翌日はタクシーで病院へ行き、母さんと落ち合って病室へ向かった。

個室しか空きがなかったらしいが、その方が色々な話をするにはありがたい。

病室の前で軽く深呼吸し、ノックした母さんに続いて中へ入る。


「おはよう。具合どう?」

「おぉ、痛むけど昨日の痛さに比べたら断然いいぞ。遠いとこ急に呼び出して悪かっ──」


母さんの背後から現れた俺を見て、真っ白なベッドに埋もれている彼が目を見開いた。

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