裏腹な彼との恋愛設計図
『嫌いな相手に二度もキスはしないでしょう』

「そうだと思いたいんだけどさ」


まだまだ強い八月下旬の日差しの下、暑さに負けそうになりながらコンビニの手前の信号で立ち止まる。


「隼人さんが受けた傷って、たぶん私が想像するよりずっと根深いんだと思うんだよね。だから、私の気持ちを信じてもらうには、時間が掛かるのかもしれないなぁ……」


じわり、汗とともに涙がこみ上げる。

今も昔も隼人さんのことが好きだって、証明出来るものは私の言葉以外にはないわけで。

告白し終えてしまった今、あとは隼人さん次第なのだと思うと、もどかしくて歯がゆい。


そうだねぇ……とため息混じりに呟いた朝海は、ぽつりとこんなことを言う。


『三好くん、来週タイムカプセル開ける時に来てくれたらいいのにね』


──タイムカプセル。

同窓会で、担任だった先生が言ったことがきっかけで、皆が思い出したらしい。

“十年後、皆で集まって開けよう”と約束して、卒業する直前に全員でタイムカプセルを作ったことを。


それを聞いて、すっかり忘れていた私も思い出した。

たしか大きな衣装ケースみたいな箱に、皆がそれぞれ手紙や思い出の品物を入れて、学校に保管しておいてもらったんだよね。

今年がちょうど卒業して十年。

来週の土曜日に、集まれる人で開けようということになったらしい。けれど。

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