裏腹な彼との恋愛設計図
「で、柊さんの気持ちはわからないんすか?」

「うん……結局聞きそびれたままで」

「はー……何やってんだ、あの人」


呆れたように息を吐き出す矢城くんに、私は日差しが照り返すアスファルトを眺めながら力無く呟く。


「会いたくなかったって言うくらいだし、私は嫌われたままなんじゃないかな……」


あの時のことは誤解だったとわかってもらえたとしても、隼人さんは十年もの間、私にいい想いを抱いていなかったことになるのだから。

それを払拭するのは難しいと思う。

ビニール袋からコーラを取り出した矢城くんは、プシュッと蓋を捻りながらこう言った。


「もし俺が柊さんの立場だったら、紗羽さんに救われたと思いますけどね」

「救われた?」

「クラスに仲良い友達もいなくて、親もうまくいってない状況なら、柊さんには紗羽さんしかいなかったはずでしょ。紗羽さんが何より大事になるのはもう必然的っていうか」


矢城くんを見やると、彼も優しい眼差しを私に向ける。


「そんなかけがえのない人のこと、嫌いになることはないと思いますよ。たとえ裏切られてたとしても」


にこりと微笑むと、彼は弾けるカラメル色の液体をゴクゴクと喉に流し込んだ。

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