裏腹な彼との恋愛設計図

 *


八月最後の土曜日。

以前残業した分、定時より三時間早く上がらせてもらった私は、朝海や二十人弱ほど集まったクラスメイトと高校の体育館ではしゃいでいた。

午前中に部活は終わったらしく、今この蒸し暑い体育館にはタイムカプセルの中身が広げられている。


「うわぁ~懐かしい!!」

「やだー超恥ずかしいんだけど、この手紙!」

「何だこのアイドルの写真、誰が入れたんだよ!?」


先生が大事に保管してくれていた箱の中には、あの頃の思い出が色褪せずに溢れていた。

学級委員をやっていた男子が次から次へと出す物の中から、自分のものと思われる品物を探す私達。


「紗羽、手紙あった?」

「うん! 私何て書いたかな……まったく覚えてない」


朝海と若干緊張しながら、“十年後の私へ”と書かれた、恥ずかしすぎる手紙の封を開ける。

すると、もう五十代になり白髪が増えてきた先生が思い出したようにこう言った。


「そういえば、皆で当時好きだった人の名前を書いて入れたんじゃなかったっけ?」


その言葉に、皆がはっとして一瞬空気が止まった。

そうだ……たしか『誰が誰を好きだったか十年後にバラしたら面白くない?』とか言い出した人がいて、私もこっそり書いて手紙に入れておいたような気がする。

< 253 / 280 >

この作品をシェア

pagetop