裏腹な彼との恋愛設計図
私はバッグの中から手紙を取り出しながら、興奮気味に言う。


「あ、あの! この手紙を入れる時、皆で“好きな人の名前を書いて入れよう”ってことになったの、覚えてますか?」

「あぁ……そんなこと言ってたっけな」


花柄の封筒から、手紙とはまた別の小さなメモ紙を取り出し、名前を確認してから彼に差し出す。


「これが、私のあの時の気持ちです」


小さく控えめに書かれた、“三好隼人”の名前。

それを受け取った彼は、微笑みこそしないものの、とても柔らかな表情でじっと眺めていた。

トクトクと鳴る胸の音を聞きながら彼を見つめていると、ふいにその目線が上げられる。


「俺のも見てみれば?」

「え……いいんですか?」

「もう何書いたか忘れたけど」


素っ気ない口調の彼だけど、見ていいと言うのなら遠慮なく見せてもらおう。

なんだかとても緊張しながら、クラフト紙のシンプルな封筒を慎重に開ける。

中にはルーズリーフを破ったような小さな紙が、折り畳まれて入っていた。


──その紙をゆっくり開いた瞬間、瞳に熱いモノが急激に込み上げる。


綺麗な字で印されていたのは、

“鈴森紗羽”

その四文字だけだった。

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