裏腹な彼との恋愛設計図
陽炎のように揺れる視界に、とても優しい表情をした隼人さんが映る。


「俺は手紙なんか書く気なかったのに、先生に無理やり封筒渡されてさ。書くことねぇよって思ってた時に、『好きな人の名前書こう』って誰かが言って。
……思い浮かぶのは、お前の名前しかなかった」


嬉しさで胸がときめく。

クリスマスイブのあの誤解があっても、私達の気持ちは繋がっていたんだ。


「なんとなく書いてたら見られそうになって、すぐ封筒にしまってそのまま箱に入れた」と、少し恥ずかしそうに頭をくしゃっと掻く隼人さん。

『何書いたか忘れた』なんて言って、しっかり覚えてるじゃない。

タイムカプセルの中身が気になるというのも、自分の封筒の行方が気になる、という意味だったのかも。


「私……ずっと、嫌われてたのかと……」


瞳からこぼれた雫で滲む名前を見つめて呟く私を、隼人さんの柔らかな声が包み込む。


「俺はあの頃からだいぶ変わったけど、変わらないモノもあったんだって気付いたよ。鈴森への想いは、今も同じだ」


鼻を啜って顔を上げると、今まで見たことのない、愛情に溢れた表情の彼と視線が絡み合う。

穏やかで優しく、綺麗で少し切なげな、夕陽の色に染まるカーテンが開かれたように、隠されていた心が今なら覗ける。

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