裏腹な彼との恋愛設計図
隼人さんは、彼の名前が書いてあるメモ紙を私に見せるように持ち上げると、それをひらひらさせてこう言い放つ。


「こんなモノなくても、俺はお前を信じるよ」


彼の指先を離れたメモ紙が、ひらりと風に舞って空へ飛んでいく。

そして、その手は私の腕を掴んで引き寄せ、しっかりと抱き留めた。


「好きだ……紗羽」


──耳元で囁かれた、待ち望んでいた言葉。

しかも名前で呼んでくれた……。

もうだめ、涙腺と心臓が崩壊する。隼人さんからこんな言葉を聞ける時が来るなんて。


「本当に……?」

「あぁ」

「からかったりしてない?」

「してない。そんなに確認するな」

「だって、隼人さん裏腹だから……」


あ、いけない。私ってば、こんないい雰囲気の時にまたバカ正直に!

腕の中で恐る恐る見上げると、彼はやっぱり無愛想な顔で私を見下ろしていた。


「たしかに俺、真逆なこと言ってる時多いけど」


一瞬ギクリとしたけれど、隼人さんの表情は次第に優しさを取り戻していく。


「何でだろうな……こうやってお前を抱いてる時だけは、素直になれる気がする」

< 260 / 280 >

この作品をシェア

pagetop